「Edge of Spider-Verse」の第四話の紹介です。今回は前三話とは変わって怪奇スリラーの様相を呈しています。恐ろしき蜘蛛男、その正体はいったい……。
前段:エッジオブスパイダーバース #3 スパイダーアーマー編 - Children & Weapon Smith
内向的な性格の高校生パットンは伯父のテッドと二人暮らし。
今朝も嫌な学校行事を忘れようと家の前で蟻を捕まえては虫眼鏡で背中を焼いていた。
「パットン!いい加減朝飯食っちまわねえか!」
家の中からテッドが叫ぶ。今朝も不機嫌のようだ。
パットンには隣の家に同い年の幼馴染がいた。名前はサラ。
サラはぱっとしないパットンとは対照的に明るく誰にでも優しい女性である。
しかしパットンはそんな彼女に対してもカーテンの隙間から着替えをのぞくような卑劣な行為をしてしまう。
下の階からは伯父の怒声が聞こえる。
「おい!パットン!学校行かないんなら二度と運転してやらんぞ!!」
「ああ、もうちょっと。一分で下におりるよ…」
スクールカースト最下層のパットンにとって学校は楽しいものではなかった。
今日も社会化見学のバスの中でつるし上げを食らうパットン。
サラが慰めるも、それさえもクラスメートのジーンには気に食わず、
却ってパットンへの攻撃は増えるのであった。
社会科見学の行き先は化学メーカーのアルコープ社だった。
サラはパットンと共にガイドの案内を抜け出して研究室を探検する。
様々な動物の保管されているその部屋で、パットンは見たこともない蜘蛛に吸い寄せられる。
パットンが手を伸ばすと、蜘蛛は彼の手に素早く飛びうつり鋭い牙で一噛みを食らわす。
その直後現れた職員に見つかり、こっぴどく叱らた二人だったが、その時彼の身体に起きている変化に気づくものは居なかった。
家に帰っても体調の優れないパットンはベッドに潜り込む。
他人には言えない体の変調は目に見える形で現れており、
指の間には蜘蛛の巣のようなものが張っていたのだった。
そこにテッドが帰ってくる。
「パットン!降りてこい!今日学校でなにやらかした!?」
学校から連絡が行ったのか、鬼の形相でテッドを呼びつける伯父テッド。
「ちょっと待って、今具合が悪くて……」
「具合悪いだ?」悪いのはお前の頭の中だろう。
隣のバカ娘と調子に乗って俺に恥をかかせやがって!」
そう言うとテッドはベルトを鞭のようにしパットンを折檻し始める。
「やめて!伯父さん。ごめんなさい!ごめんなさい!」
隣の家から響くパットンの悲鳴を聞き、サラは涙するのであった。
その晩パットンは謎の渇きに襲われる。
キッチンに向かった彼は冷蔵庫を素通りし、その裏のネズミ取りに手を伸ばす。
生きたネズミを頬張る彼の口には無数の牙が並んでいた。
それでも足りないパットンは、続いて子猫に狙いを定める。
猫の爪に抵抗されたパットンが反射的に腕を向けると、
手首から飛び出した蜘蛛糸が子猫を絡め取るのだった。
翌晩、テッドが家に帰ってくると恐ろしい風景が広がっていた。
「おい!パットン!俺の飯は……なんじゃこりゃ!?」
部屋の中には無数の小動物が蜘蛛糸くるまれ生け捕りにさせられていた。
「これは僕の晩飯だよ、テッド伯父さん。
そしてアンタもね!!」
天井に張り付いた赤い瞳のパットンがテッドに襲いかかる……。
その日からパットンの生活は変わった。
赤い瞳を隠すためのサングラスをかけたパットンは
体格で勝るジーンにも臆せず、学校でも捕えた小動物を貪る始末だった。
ある夜、隣に住むサラが家を訪れてくる。
「パットン、このところジーンが見当たらないの。電話もつながらないし」
「なんでそんな事、僕の所に言いに来るんだよ」
「あなたとジーンが一緒に居るところを見て以来、誰も彼を見かけてないって。
それに、あなたの様子も……」
「誰の様子がおかしいって?」
そう言いながらサラに唇を重ねるパットン。そのまま彼女の首筋に噛みつく。
「何するの!?やめて!!」
サラがパットンを突き飛ばすと、彼の顔がみるみる豹変していく。
「オマエ、何をしたかわかってるのか…?」
パットンが大声で叫ぶとその顔は複数の眼を持つ蜘蛛の化け物に豹変する。
サラは逃げ出そうと駆けだすが、行く先を蜘蛛糸でふさがれ近くのドアに飛びこむ。
そこには数々の小動物だけでなく、ベッドに縛り付けられた人間も捕えられている
パットンの食糧庫だった。
ベッドの上の男性がうめき声を上げると、
彼の体の穴と言う穴から無数の子蜘蛛がはい出してくる。
恐怖にへたり込むサラの前に四本腕四本足のまさに蜘蛛の怪物となった
パットンが立ちふさがる。
「やめて、お願い、あっち行って……」
「やめてだと?僕は何も君を傷つけようという訳じゃない。
僕と一つになって、僕の中で新たな人生を始める事になるんだよ」
パットンの四本腕がサラにせまるその瞬間、背後から声がかけられる。
「ほう、これは美味そうな蜘蛛じゃないか」
振り返るとそこには時代錯誤の衣装を着た謎の男が立っていた。
まるで吸血鬼の様な眼差しを持つ男、インヘリターのモーランである。
「オマエ、何者だ?」
「さあ、何者だろうな。貴様の夕食に呼ばれたゲストだよ」
そう言うとモーランはパットンを軽く捻り上げ、彼のエネルギーを吸い尽くす。
「これは夢よ、これは夢よ、これは……」
うわごとのように呟きながら家へ逃げ帰るサラ。
部屋に戻り一息着いたサラだったが、パットンに噛まれた首筋が疼きます。
鏡を見ると、傷口の周りの皮膚の下で何かが蠢く。
それらはサラの首筋から這いだしてくる。
何匹も、何百匹もの無数の蜘蛛が……。
またもやバッドエンドながら、正直このスパイダーマンはスパイダーバースに参加してくれなくて良かったというか……。
まるで仮面ライダー第一話のような蜘蛛男の容姿もさることながら、最初の登場シーンが蟻焼きをするのび太君というパットンの性格にも難ありかと思われます。インヘリターのモーランがまるで正義のキャラに見えてしまうくらいです。
今回の見どころは何といってもクラシカルな表紙。テイルズオブサスペンス時代のスリラー感満載のそのアートは話の内容と相まって、まさに「怪奇物」という雰囲気を醸し出しています。
エッジオブスパイダーバースの単行本はこちら
Amazing Spider-Man: Edge of Spider-Verse
- 作者: Marvel Comics
- 出版社/メーカー: Marvel
- 発売日: 2015/05/12
- メディア: ペーパーバック
- この商品を含むブログを見る
その他スパイダーバース関連のストーリー/単行本紹介はこちら