サイクロップスとフェニックスの卵: タイムランズアウト編
5月に入り昨年からアナウンスされていたマーベルコミックスの大規模イベント「シークレットウォーズ」が遂に始まりました。あらゆる並行世界が衝突し消滅していく中、ミュータントを代表する一人であるサイクロップスがどのようにして本イベントに突入したかを振り返ってみたいと思います。
まず承前として、これまでのアベンジャーズ/ニューアベンジャーズ誌にて「タイムランズアウト」というイベントタイトルで並行世界の衝突の謎を追い、なんとかそれを回避しようとするヒーロー達が描かれていました。
幾つかに分かれた勢力のうち、サンスポットとキャノンボールをリーダーとする若きニューアベンジャーズは真摯に危機を回避しようと各勢力に渡りを付け、情報を収集していました。その勢力の一つがサイクロップスの居る「ネイションX」でした。
アベンジャーズ #38
同じミュータントしてこの危機にどう立ち向かうかを問いにネイションXを訪れたサンスポットはサイクロップスと会談を持つ。
「彼が過去の恩讐を捨てて訪ねて来てくれたことは嬉しいよ、ロベルト。
だがここネイションXは訪れる者を厳しく制限させてもらっている。
ミュータントと呼ばれる我々が安らかに過ごす場所を得るには必要な処置だ」
サイクロップスはサンスポットにそう説明します。
サイクロップスは続ける。
「にも関わらず我々は常に危機にさらされ続けた。
だからこそ、私達は"何かあった時"に備えておく必要があるんだ」
「その割には僕らは堂々と入り込めましたけどね」
「真摯な警告として受け取っておこう」
「それじゃあ本題ですが…ネイションXはどうするつもりなんですか?」
「どうする、とは?」
「さっきあなたが言った"何かあった時の備え"ですよ。
有事を好機と考えてるんじゃないんですか?」
「そうだな…正直に言ってその何かが起きた際は"全て燃えてしまえ"ってとこかな」
「何です?どういう意味ですか、スコット!」
「ロベルト、"何かを成すときは周りを自分に合わせようとするな、自分を周りに合わせろ"。そう教授に教わらなかったか?」
サンスポットの問いに付き合わないサイクロップス。
だが不意に核心を口にします。
「私の切り札はフェニックスエッグだ、ロベルト。
まあ、これも既に使う期を逸してるわけだがな」
「またそうやって思ってもいないことを……」
「何にせよだ、ロベルト。この会談自体遅すぎたものだって事じゃないかな」
サイクロップスが煙に巻くと、向こうからビーストが歩いてきます。
「ロベルト、スコット」
「ハンク」
サイクロップスは一言だけ答えて去って行きます。
「相変わらず彼は危なっかしい雰囲気ですね、Dr.マッコイ」
「ああ、そうだな」
「次に手伝えることはありますか?」
「ありがたいな。吾輩には謝罪と赦しが必要なようだ。
若者よ、吾輩は多くのものを失いすぎた。
これからも多くの助力を願うかもしれんぞ」
以前の記事でも軽く紹介した事のある本シーン。世界を救うべく真摯に向かい合うサンスポットをかわし続けるサイクの態度が印象的です。
最初のセリフにある「彼」というのは恐らくビーストの事でしょう。犬猿の仲となってしまったビーストがわざわざ訪れて来ていることは承知の上でつれない態度を取っているように見えます。
ただ、印象的なのが最後のビーストのセリフ。インカージョンに対して効果的な手を打てないでいるビーストは自ら「全てを失った」と言っています。対するサイクロップスも同様に生徒や仲間を失った状態にあるようにも見えます。そんな「失った者」同士だからこそ一言のやりとりだけでも交わしたと考えると、単に仲が悪いだけではない感情も有るのではないかと深読みしてしまいます。
アベンジャーズ #42
次いで登場したのは42号。
引き続きインカージョン阻止に向けてニューアベンジャーズが東奔西走している話です。
舞台は再びネイションX。今度はサンスポットとキャノンボール二人で訪れています。
表に立つセンチネルを見つめてサイクロップスが切り出します。
「終末の日、それは言いかえれば始まりの日とも言えるかもしれない。
私はミュータントの為に戦いの日々を送ってきた、あのセンチネル達に追われてね。
だが今、あの歩哨は私たちを見守ってくれている。何故かわかるかい?
新たな目的を与えてやったからだ」
「そいつは素晴らしいこったね、大将」
キャノンボールが鷹揚に答えます。
「あなたの言うこともわかります。
でも、いまはあなたがどう動くかが重要になってきています、サイクロップス。
もう期限が差し迫っているんですよ」
迫りくる終焉の日に回りくどい話はしていられないとばかりにサンスポットが尋ねます。
「ロベルト、前に君が来た際に"既に機を逸している"と言ったのを覚えてるか?
なのに君はまだ私の元を訪れ、再びヒーローとして人類の為に戦ってくれと願っている」
「そのために理由なんていらないだろ?」
「そうじゃないんですか!?」
若き二人はサイクロップスに突っかかります。
そんな言葉を流しつつフェニックスエッグの部屋に入っていくサイクロップス。
「私はこれまでの人生をかけてミュータントの居場所を探し続けてきた。
だが今持ってそんな世界は存在しないことを見せつけられている…」
ゴーグルに隠されたサイクロップスの表情は読めません。
「ひょっとして今回の件は戦いなどではなく、再生の道筋なんじゃないかと
思ってるんだよ、ロベルト。既にそのための船は出港しているんじゃないかな」
今回のセリフだけ見ると既に諦めているかのような態度に見えるサイクロップス。本当にミュータントのことしか考えられず「人類のために戦う」ことを捨ててしまったのでしょうか。
前回は名前のみ出てきた「フェニックスエッグ」らしき物体が部屋の奥に見えます。果たしてサイクロップスの真意はどこに有るのでしょうか。
このような前振りを経てサイクロップスもシークレットウォーズに突入します。
サイクロップスが活躍するSW第一話の紹介は後日、別のエントリにて紹介したいと思います。
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