X-FACTOR TPB vol.21: The End of X-Factor(3)
X-FACTOR TPB紹介もいよいよ最終回。#261~262の紹介です。今回はモネ&ダーウィン編、そしてレイラ&マドロックス完結編。X-FACTOR探偵社のドラマにどのような幕が引かれるのでしょうか。
#261 "The End of X-Factor, Part 5 of 6"
ダーウィンは自身に課せられた死の神の力を清算するために
ラスベガスで地獄の女神ヘラを探していた。
だが、踏み込んだ倉庫に居たのはマフィアのゴロツキだけ。
期せずして銃撃戦に巻き込まれますが、身を守るために瞬時に身体を進化させる
能力をもったダーウィンにとって拳銃ごときでは傷一つ付けられないのだった。
唖然とするマフィア連中を一喝して追い払うダーウィン。
結果としてダーウィンが悪漢を蹴散らす形になったその様子を見て、
感心する女性が一人、モネである。
「やるじゃないですの」
モネの顔をみてダーウィンは絶句します。そしていきなり殴りかかってきました。
「お前!何者だ!?」
いきなりのパンチに面食らったモネは倍の力で殴り返します。吹き飛ぶダーウィン。
「なにするんですの!!」
「人を化かすのもいい加減にしろ!モネは死んだはずだ!」
それを聞いてモネは冷静になります。
「グイドが私もこの世に戻してくれたのよ」
「グイド!?」
「そう、彼が地獄の王になってね」
あっけに取られるダーウィン。モネは彼を誘って飲みに行きます。
二人は地獄での戦いからここまでの経緯を語りあいます。
「あなた、チュニジアからここまで戻ってきたの?」
「そう、えらい時間かかったよ。君は?」
「私はNYで目覚めたわ。探偵事務所も粉々。
マンハッタンには居たくないからこんな所まできてしまったのよね」
二人とも変わってしまった。
神の力に翻弄されるダーウィン、死を経て魂をなくしたモネ。
お互い分かり合うような、分かり合えないような微妙な距離感が続く。
サロンの歌手が「ここは天国♪」と歌い上げるところに、モネが絡みます。
「何が天国ですの!こっちは地獄から帰って来たのよ」
「モネ、やめようよ」
「あなたまで何!また喧嘩しようっていうの!?」
「そんなこと言わないよ、好きな女性ともう殴り合いなんてしたくないさ」
突然の告白に一瞬固まったモネですが、一笑いすると行ってしまいました。
肩を落とし店を出るダーウィン。
しかし店の前で待ってたモネが急に彼にキスをする。
そのまま抱き合い体を重ね合う二人だった。
朝、モネと一緒のベットに横たわるダーウィンは、一睡もしていなかった。
彼女は自分を受け入れた訳では無い。そのことはわかっているダーウィンだった。
今の彼女は誰も受け入れることは無いだろう。
そこに死の女神ヘラが現れる。
「お前、私を探していたんだろう?ふふふ、タイミングが悪かったか」
「…いや、なにか勘違いしてるんじゃないか?」
「頭に響く声、それを止めたいんじゃあ……」
「何も問題ないさ、全ては上手くいってるんだよ」
「そうか、妾の勘違いだったようだな」
そう言って闇に消えていくヘラ。
ダーウィンはそれで良かったのだ。受け入れられなくて良い。
満たされない者同士、少しだけ一緒にいられればそれで良いのだ。
ダーウィンはそう思うことにした。
ちょっと最後は独自の解釈でまとめてしまいました。同じように思いがけぬ境遇に陥ってしまった者同士が肩を寄せ合う話、そんなところでしょうか。死の女神ヘラを絡めたのはやや強引な感じはしないではありませんが、ダーウィンの物語の決着がついているのでこれで良いのでしょう。
#262 "The End of X-Factor, Part 6 of 6"
魔物化したマドロックスとレイラは彼の両親がかつて住んでいた牧場に隠れ住んでいた。
いつ終わるともわからぬ生活を続ける中、レイラは自身が妊娠していることに気付く。
素直に喜ぶことのできない状況に困惑していると、彼女の側にダミアン・トリップが現れる。
「その子供の父親、ジェイミー・マドロックスであろう」
ダミアン・トリップはもはや人間ではなくなったマドロックスと共にいる
レイラに幸福は訪れないと責め立て、さらにこの家に隠れ住んでいることを
警察に通報したと告げる。
「なんなの!いったいあなたは何がしたいのよ!?」
「以前から言っているだろう。
お前たちの存在、お前たちの行動が将来ミュータントの暴走を引き起こし、
人間社会の破滅をもたらすのだと…。
全てはレイラ、貴様の過ちが原因なのだと…」
「いい加減にして!!」
レイラが感情をぶつけます。トリップの言い分は彼の意見であり、自分達には関係ない。いつまでも自分の妄想に固執していろと言い放つ。
するとトリップはその幽体を消滅させる。いつまでもX-FACTORに付きまとっていたトリップであったが、あっけない最後であった。
レイラは食事を作ると牧場の納屋に運んでいく。
人としての理性が失われているマドロックスは納屋の地下室にいた。
レイラの顔をみるや飛びかかってくるマドロックス。
しかし彼は鎖で繋がれており、彼女までは手が届かないでいた。
それほどまでに状況はひどくなっていたのだ。
そんな彼の様子を見て悲しみに暮れるレイラ。
その時、マドロックスを繋いでた鎖がちぎれ、レイラは組み敷かれる。
思わずレイラは自分が妊娠してること、そして父親はマドロックスであることを叫んでしまう。
それを聞いたマドロックスは動きを止めると自ら地下室に戻り扉を閉めてしまう。
「妊娠した、妊娠、妊娠したの、父親はあなたなの」
魔物化したマドロックスの頭の中でその言葉が繰り返される。
「妊娠した、妊娠、父親…」
マドロックスは自然と手を組み、祈りを捧げる姿勢を取っていた。
時を同じくして牧場には警察官がやってくる。
不法侵入で彼女を逮捕しようとする警官に、とっさにレイラは反撃してしまう。
するとトリップが手を回していたのか超常現象対策部隊も現れ攻撃をしてくる。
その攻撃にレイラのガントレットも破壊され、取り押さえられてしまう。
「お嬢さん、署まで来てもらうよ」
「おい、彼女はお嬢さんじゃない。俺の妻だ!」
そこに現れたのはジェイミー・マドロックスその人だった。
「ここは俺の家で、彼女は俺の妻だ。その手を放してもらおうか」
「ジェイミー!!」
その姿に喜びを抑えられないレイラであった。
少し時間を遡る。
納屋の地下で祈りを捧げるマドロックスに声をかける者がいた。
彼が困難に陥ったとき必ず助けに来ると約束した女性がいた。
テレサ・キャシディ。かつてサイリーンと呼ばれ、今は女神モリガンとなった彼女だ。
彼女は神の力を行使しマドロックスを元の姿に戻す。彼との約束を果たしたのだ。
警官たちも帰り、束の間の再開を喜びながらテレサに礼を言うマドロックス。
「ところでこれからどうするの?
また仲間を呼び戻してチームを再開するんでしょ?」
そう聞くテレサにマドロックスとレイラは笑いあって答える。
「子供もできた、両親の牧場も復興させたい、これからの生活が待ってるんだ。
世界を救う役目はもう、他の連中に任せたよ。
俺たちはもう十分にやったよ。そう、もう十分だ」
そういったマドロックスの表情は迷いのないすっきりとした笑顔だった。
100号以上に渡って続いてきたX-FACTOR探偵社もこれにて完結です。
ダミアン・トリップとの決着やマドロックスの復活など駆け足なところも否めませんが、晴れてレイラと結ばれて平穏を手に入れた主人公マドロックスは、最後のセリフの通り「やりきった」という感にあふれていてとても良いラストだったと思います。
自分がアメコミ原書を通して読もうと思った最初の作品であるX-FACTOR。最終回まで紹介できて個人的にもすっきりとした思いがあります。マドロックスにはまた活躍してもらいたいという気持ちと、せっかく安らぎのあるラストを迎えられたのだからそっとしてやりたいという気持ちとどちらもありますね。