X-FACTOR TPB vol.13: Hard Labor
X-FACTOR TPB 13巻の紹介です。#220から223まで収録。
お話はレーン(ウルフスベーン)のお腹の子供がメイン。しかし、アメコミ界において子供の誕生というのは新たな厄介事がセットでついてくる物…。レーンにとって、そしてX-FACTOR探偵社にとって新たな転換点となります。
#220 "Original Sins"
臨月もまもなく近づいたレーンは雨の中散歩に出かけます。「わざわざ雨の日にいかなくても」と心配するマドロックス(マルチプルマン)に「大丈夫、私の名前はレーン(Rahne)でしょ、雨(Rain)なんて丁度いいじゃない」と言って出かけます。
すると雨の中傘もささずに街燈で踊るシャッタースターが。
「何やってるの!?」
「いや、『雨に歌えば』ってミュージカルだっけ?それを見てね。あれは面白いものだね。リクターはつまらないって途中で見るの止めちゃってたけど」
チームを離れていたレーンが戻ってきた際、スターとリクターがベッドの中に居たところに鉢合わせてしまい、気まずい雰囲気の二人。しかし、「雨って面白いねえ、モジョバースにはこんなの無かったよ」と無邪気に語るスターの態度にレーンの気持ちも徐々にほぐれていきます。
しかし突然レーンの目つきが変わり、スターも異変に気付きます。通りかかった教会の中からする血の匂いに、二人は戦闘態勢を取って中に飛び込みます。
中では少女の姿を借りた悪魔が礼拝に来ていた人々を惨殺していたのです。
敬謙なクリスチャンでもあるレーンは激昂して飛びかかります。手練の魔物ではありましたが、レーンとシャッタースターの二人には敵いませんでした。しかし、教会の周辺は既に異様な雰囲気に包まれていたのであった。
#221
教会出た二人に、今度は怪しげな雰囲気をまとう狼(Cu Sith クーシー?)が襲いかかります。狼の首を刎ねるスターだったが、首と身体がそれぞれ別の狼となって更に襲いかかってくるので手に負えません。
タクシーを奪って逃走する二人に、今度は古代バステト神の姿をした怪物が襲い掛かります。車から投げ出される二人。バステトはスターを軽く退けると、レーンのお腹の子供に用があるというような事を言い、にじり寄ってきます。
するとまたも狼の様な獣人が現れ(Okami オオカミ、Kasha ケイシャ)バステトを退けます。
「この女から離れよ!愚か者」
「母と子は我らのもの!」
どうやらレーンの子供を狙っているのは一人ではなく、さまざまな獣神がその目的のため我先にと争っているという状況のようです。
一方、X-FACTOR探偵社ではその状況を知ってか知らずか、レイラ・ミラーが建物の窓に扉に塩で文様を描いて結界を張り巡らせていました。
#222
さらに場面は変わって病院へ。撃たれた傷も癒えたグイド(ストロングガイ)はモネ(M)に付き添われて退院するところだった。その巨体で車椅子を押しつぶしてしまうグイドと、それを支えようと駆け寄るモネ。グイドはそのまま彼女にキスをする。瀕死の傷を負ったことで二人の仲は一気に縮まったようである。
しかし、マドロックスはレイラの言っていた「生き返った者は魂が無いか、欠けてしまっているの」という言葉を思い出してグイドを案じるのであった。
ほうほうの体で探偵社に逃げ込むレーンとスター。ここでひと段落かと思ったところで、運悪くグイドとモネが戻ってきてしまう。これにより再び乱戦となるX-FACTORと狼軍団。業を煮やしたレーンが屋上に現れると、先ほどから様子を伺っていたコートの男が狼軍団を蹴散らして一気に屋上まで、飛び上がった。
その男はマーベルユニバースを代表する狼男、ジャック・ラッセルその人だった。
#223 "The Pack Runs Wild!"
ジャックに連れられて車で逃げ出すレーンだったが追ってきたのは巨大なケルベロスだった。ケルベロスは車を一噛みして放り投げると、人間に姿を変えレーンを追います。しかしそこへ北欧神話の狼フェンリスが横槍を入れ、追いついたX-FACTOR探偵社も含めてまたも大乱戦となる。
そして産気づいたレーンにやさしく声をかける男があらわれる。その男に誘われるまま屋敷に着いていってしまったレーンであったが、彼こそお腹の子供を狙う半神アガメムノンであった。
#224 "Hard Labor"
アガメムノンに囚われ地下室に閉じ込められるレーン。
「殺してやる」
レーンはいきり立って言います。
「殺してやる?そんなことを言っても君には何もできない。知ってるだろ僕の身内は死の女神でもある…」
「ヘラ!おまえ、ヘラの手先で動いてるの?」
「手先?いやいや、これは戦いだよ。神とミュータントの間に生まれる子供を誰が一番に手に入れるかのね」
そう言うと地下に彼女を残し、お腹の子供に出てくるよう促すのであった。
産気づくレーン。ニブルヘイムの狼神フリムハリ(Hurimhari)とミュータントのレーンの間に設けられたその子供は、通常の赤ん坊と違いレーンの口から生まれ出でると、その力を手に入れんとするアガメムノンを食い殺し真っ赤な獣の目を光らせるのであった。
母に寄り添おうとする赤ん坊だったが、獣の姿の子をレーンは受け入れられず、その手を拒んでしまう。ショックで走り去る赤ん坊と、レーンを追って屋敷に突入したマドロックスとテレサは鉢合わせてしまい、襲い掛かる赤子をテレサはソニックストリームで吹き飛ばしてしまう。
吹き飛ばされた赤子の鳴き声は外で戦っている獣神たちを呼び寄せる。我先に赤子を手に入れんと声の元へ走り出す狼軍団。誰もいなくなった戦場にぽつんと取り残されたケルベロスとグイド、シャッタースター。
「こらぁ!貴様らまたんか!あれは俺のものだ!!」
「…行っちまったけど、あんたは追わなくていいのかい?」
「あー、そうだな。疲れたし帰るとするか」
「そうかい、そこまで送ってこうか?」
「いや、お気遣い結構。」
「いい戦いっぷりだったね、あんた」
「貴様もな」
赤ん坊を吹き飛ばしてしまったことを謝ろうとするテレサに対し、レーンは「あんな化け物、私の子供じゃない。絶対違う…」とうなだれるのであった。
そしてその赤ん坊。森の中をさまよっている所にヘラが現れる。
漁夫の利を得るかというその時、大挙して押し寄せた狼軍団がヘラも巻き込む形でもみ合いになり、彼女が通ってきたポータルに雪崩れ込んでいってしまった。誰もいなくなった静寂の森の中で狼神の赤ん坊を抱き上げたのはジャック・ラッセルだった。
ということでレーンの息子をめぐる神々の戦いが始まりました。といってもこの話の続きは相当先に預けられます。ジャック・ラッセルはWarewolf by Nightの異名を持つ狼男で初出は1972年と相当古株。「マーベルユニバースを代表する」なんて書いてしまいましたが、どれほどの露出があるのかは調べられてはいません。
また、今回のストーリーではフェラルの幽霊が出てきて、レーンにあれこれ言って付き纏っていたのですが、この後に登場した形跡もなく生かされなかった伏線のようでしたので紹介の中ではばっさりカットしてしまいました。個人的にはX-MENを知った90年代に「なんかこのウルフスベーンとフェラルって同じようなキャラクターが同時に存在するんだなあ」と思っていたことがありました。もっともそれはウルフスベーンが獣人形態から戻れなかった頃をたまたま見ていたからで、常に獣人のフェラルと人⇔狼と自在に変身するレーンとはキャラクターは別ではありましたが。
さて次の巻は久々に主人公マドロックスが活躍するお話です。マドロックスの見た不吉な未来とは?